市場が伸びているだけでは足りない?補助金の事業計画に必要な顧客・競合分析
※本記事は、2026年8月6日時点で公表されている公募要領などを参照して作成しています。補助金の申請要件、様式、審査項目は、公募回によって変更されることがあります。申請時には、対象となる公募回の最新資料をご確認ください。
補助金の事業計画で、市場の成長性を説明するために、次のような文章を書くことがあります。
○○市場は今後も成長が見込まれています。そのため、当社の新商品にも十分な需要があると考えます。
市場に関する統計を示すことは大切です。
しかし、市場全体が成長していることと、自社の商品やサービスが実際に売れることは同じではありません。
市場が拡大していても、
- 自社が対象とする顧客が明確でない
- 顧客が抱える課題を把握できていない
- 競合商品との違いが説明できない
- 顧客が現在利用している代替手段を見落としている
- 価格や販売方法が顧客の条件に合っていない
といった場合には、自社の売上につながらない可能性があります。
補助金の事業計画では、市場規模や成長率を示すだけでなく、
誰が、どのような理由で、自社の商品やサービスを選ぶのか
まで具体的に説明することが重要です。
この記事では、補助金の事業計画における市場・顧客・競合分析の役割と、分析した内容を売上計画や補助事業へつなげる方法を解説します。
この記事で分かること
- 市場が成長しているだけでは売上の根拠にならない理由
- 対象となる顧客を具体化する方法
- 顧客ニーズを事実で確認する方法
- 競合と代替手段を分析するポイント
- 自社が選ばれる理由の組み立て方
- 顧客・競合分析を売上計画へつなげる方法
1.補助金の事業計画では、なぜ顧客・競合分析が必要なのか

補助金の事業計画では、単に「よい商品を作る」「新しい設備を導入する」と説明するだけでは足りません。
その商品やサービスを必要とする顧客が存在し、競合や代替手段がある中でも、一定の売上や付加価値を生み出せることを示す必要があります。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金第1回の公募要領では、事業計画について、継続的に売上・利益を確保できる市場規模と成長性を示すことに加え、顧客ニーズを踏まえ、競合他社と比べた明確な優位性を具体的に示すことが求められています。
審査項目にも、次のような観点が含まれています。
- 市場や顧客動向などの外部環境
- 自社の経営資源を踏まえた競争優位性
- 顧客ターゲットの明確性
- ニーズの裏付け
- 顧客から選ばれる理由
- 事業化までの課題と解決方法
- 目標値と事業の実現可能性
小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉第20回でも、対象とする市場や顧客ニーズを捉えているか、客観的事実に基づいて売上高・売上総利益の増加を見込めるか、顧客や市場に新たな価値を生み出す取組であるかなどが計画審査の観点として示されています。
したがって、市場・顧客・競合の分析は、申請書を詳しく見せるために行うものではありません。
補助事業によって提供する商品やサービスが、実際に事業として成立するか
を検討するために行います。
2.「市場が伸びている」と「自社の商品が売れる」は同じではない

市場全体の成長は、自社にとって追い風になる可能性があります。
しかし、市場が成長していても、次のようなことが起こり得ます。
- 成長しているのは、自社が対象としない顧客層である
- 成長を見込んで新規参入者が増える
- 大手企業による価格競争が進む
- 新しい代替商品やサービスが登場する
- 顧客の購入条件が変化する
- 自社が必要な販売経路を確保できない
- 自社の生産能力では需要に対応できない
つまり、市場規模や成長率は、事業計画に必要な情報の一部にすぎません。
自社の売上を考える際には、少なくとも次の関係を確認します。
市場全体
→自社が対象とする顧客層
→実際に接触できる顧客
→購入する可能性がある顧客
→自社を選ぶ顧客
→購入単価と購入頻度
例えば、全国の市場規模が大きくても、自社が営業できる地域が限られ、実際に対象となる顧客が20社であれば、売上計画はその20社を起点に考える必要があります。
一方、市場全体がそれほど大きくなくても、特定の顧客が抱える課題に自社が適切に対応でき、継続的な受注が見込める場合には、事業として成立する可能性があります。
大切なのは、統計上の市場規模を大きく見せることではなく、自社が実際に獲得できる顧客と売上を具体的に考えることです。
3.最初に「誰が顧客なのか」を具体化する

「中小企業向け」「地域住民向け」「高齢者向け」といった説明だけでは、対象となる顧客が広すぎます。
顧客を具体化するためには、次のような項目を確認します。
顧客の属性
- 法人か個人か
- 業種や事業規模
- 所在地や商圏
- 年齢や世帯構成
- 予算
- 購買担当者や意思決定者
顧客が置かれている状況
- どのような場面で困っているのか
- 現在はどのように対応しているのか
- どの程度の頻度で問題が起きるのか
- 問題を放置するとどのような不利益があるのか
- 解決のためにどの程度の費用を負担できるのか
購入に関する条件
- 何を基準に商品やサービスを選ぶのか
- 価格、品質、納期のどれを重視するのか
- 最小注文量や対応地域に条件があるか
- 誰が購入を決定するのか
- どの販売経路を利用するのか
例えば、「食品メーカー向けの印刷サービス」では、まだ対象が広すぎます。
次のように具体化すると、顧客像が見えてきます。
京都府内で季節商品や試験販売用の商品を開発する小規模食品メーカーのうち、100~500枚程度のパッケージを短納期で必要とする事業者
対象となる顧客を具体化すると、
- どのようなサービスが必要か
- 必要な設備の仕様
- 適切な価格
- 営業方法
- 比較すべき競合や代替手段
も考えやすくなります。
4.顧客ニーズは「あると思う」ではなく、事実で確認する

事業者自身が、
このような商品があれば、きっと顧客に喜ばれる
と考えていても、それだけでは顧客ニーズの裏付けとして十分ではありません。
顧客ニーズを確認する情報には、次のようなものがあります。
自社が持っている情報
- 顧客からの問い合わせ
- 商談記録
- 見積依頼
- 失注理由
- クレームや改善要望
- 既存商品の販売実績
- リピート購入の状況
- 営業担当者が受けた相談
- 外注した注文や断った注文の記録
顧客から直接集める情報
- 顧客への聞き取り
- アンケート
- 見込顧客へのヒアリング
- 試作品への評価
- テスト販売
- 商談会や展示会での反応
- 見込注文や購入意向
外部の情報
- 行政機関の統計
- 業界団体の調査
- 民間調査会社の市場データ
- 競合企業の公開情報
- 消費者調査
- 地域の人口・産業統計
公的な統計や市場調査は、市場全体の動向を確認する際に役立ちます。
一方、
自社の商品を、誰が、なぜ買うのか
を確認するためには、顧客への聞き取り、見積依頼、販売実績など、自社の事業に近い情報も必要です。
KohliとJaworskiによる市場志向の研究では、現在および将来の顧客ニーズに関する市場情報を組織的に収集し、その情報を組織内で共有し、具体的な対応へつなげることが重視されています。顧客の声は、集めるだけではなく、商品、販売方法、業務体制などへ反映することが大切です。(Duke People)
5.競合分析では「同業他社」だけを見ない

競合と聞くと、同じ商品やサービスを提供する同業他社を思い浮かべるかもしれません。
しかし、顧客は同業他社の商品だけを比較しているとは限りません。
競合分析では、次のような選択肢を確認します。
直接競合
自社と類似する商品やサービスを、同じ顧客層へ提供している事業者です。
例えば、小ロット印刷サービス同士の比較です。
間接競合
提供方法は異なりますが、顧客の同じ課題を解決する商品やサービスです。
例えば、印刷会社へパッケージを発注する代わりに、既製の容器へラベルを貼る方法が考えられます。
代替手段
顧客が自分で作業する、複数の外部事業者を組み合わせる、別の方法で済ませるといった選択肢です。
例えば、
- デザイン会社とネット印刷を別々に利用する
- 自社でラベルを作成する
- 包装方法を変更する
といった方法です。
何もしないという選択
顧客は、商品を購入しない、計画を延期する、現在の不便を受け入れることもあります。
新商品を作らず、既存商品だけを販売し続けることも、顧客にとっては一つの選択です。
ポーターのファイブ・フォースでは、競争を現在の同業他社だけに限定せず、顧客、仕入先、新規参入者、代替商品・サービスを含めて業界構造を捉えます。(ハーバード・ビジネス・レビュー)
補助金の事業計画でも、「近隣の同業者は少ない」と書くだけではなく、顧客が現在利用している代替手段まで確認することが大切です。
6.競合とは「顧客が選ぶ基準」で比較する

競合分析でよく見られるのが、次のような表現です。
当社は競合他社よりも品質が高く、丁寧な対応ができます。
しかし、
- 何をもって品質が高いのか
- どのような対応が丁寧なのか
- 顧客はそれを重視しているのか
- 比較対象となる競合は誰なのか
が分からなければ、違いを具体的に説明したことにはなりません。
競合との比較は、顧客が購入先を選ぶ際の基準に沿って行います。
| 比較項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 価格 | 単価、初期費用、送料、追加費用 |
| 品質 | 精度、耐久性、仕上がり、不良率 |
| 納期 | 標準納期、特急対応、変更への対応 |
| 注文条件 | 最小ロット、最低発注金額 |
| 対応範囲 | 企画、設計、製造、納品後対応 |
| 専門性 | 特定業種への知識、資格、実績 |
| 利便性 | 注文方法、窓口、相談のしやすさ |
| 販売地域 | 対面対応の範囲、配送地域 |
| 信頼性 | 継続実績、顧客評価、保証 |
| 代替可能性 | 他の方法で同じ課題を解決できるか |
すべての項目で競合より優れている必要はありません。
価格では大手企業に及ばなくても、
- 小ロットに対応できる
- 企画段階から相談できる
- 地域や顧客の事情を理解している
- 仕様変更へ迅速に対応できる
といった点が、特定の顧客にとって重要であれば、選ばれる理由になり得ます。
自社に都合のよい項目だけを選ぶのではなく、顧客が実際に重視している基準で比較することが重要です。
7.ファイブ・フォースで競争環境を広く確認する

市場や競合を検討する際には、業界構造や競争条件に着目する考え方が参考になります。
経営戦略論では、こうした考え方はSCP的な視点とも関係します。その代表的な実務フレームワークの一つが、ポーターのファイブ・フォースです。
ファイブ・フォースでは、次の5つの競争要因を確認します。
① 既存企業同士の競争
- 競合企業は多いか
- 価格競争が起きているか
- 商品の違いを出しにくくないか
- 市場が成熟していないか
② 新規参入の脅威
- 新しく参入しやすい市場か
- 設備や資格がなくても始められるか
- 顧客との関係やブランドが参入障壁になるか
③ 代替商品・サービスの脅威
- 別の商品や方法で同じ課題を解決できないか
- 技術の変化で現在の商品が不要にならないか
- 顧客が自社内で対応できないか
④ 顧客の交渉力
- 少数の顧客へ依存していないか
- 顧客が容易に購入先を変更できるか
- 価格の引下げを求められやすくないか
⑤ 仕入先の交渉力
- 特定の仕入先へ依存していないか
- 原材料や設備の価格が上昇していないか
- 代わりの仕入先を確保できるか
ポーターは1979年にファイブ・フォースの基本的な考え方を提示し、2008年の論文で改めて整理しました。同論文では、企業間の競争を既存の同業者だけに限定せず、顧客、仕入先、新規参入者、代替商品を含めた競争構造として捉えています。(ハーバード・ビジネス・レビュー)
ただし、ファイブ・フォースだけで外部環境のすべてを分析できるわけではありません。
法改正、人口動態、景気、為替、社会的価値観、技術革新などについては、必要に応じて別の調査や分析を行います。
8.顧客・競合分析で確認する6つの問い
以下の6つは、特定の経営理論から直接導かれた正式なモデルではありません。
顧客・競合分析を補助金の事業計画へつなげるために、本記事で実務向けに整理した確認事項です。
① 誰を対象とするのか
「地域企業」「一般消費者」ではなく、業種、規模、地域、利用場面などを具体化します。
② 顧客は何に困っているのか
顧客が抱えている問題、その頻度、放置した場合の不利益を確認します。
③ 顧客は現在どう対処しているのか
競合商品、外注、自社対応、代替商品、何もしないという選択を確認します。
④ 顧客は何を基準に選ぶのか
価格、品質、納期、対応範囲、専門性、利便性など、購入時の判断基準を確認します。
⑤ なぜ自社が選ばれるのか
自社の強みが、顧客の判断基準とどのようにつながるかを説明します。
⑥ その判断にどのような根拠があるのか
聞き取り、見積依頼、販売実績、競合調査、統計などの事実で裏付けます。
これらは、一度決めたら終わりではありません。
顧客への聞き取りによって対象顧客を変更したり、競合調査によって価格やサービス内容を見直したりしながら、事業計画を調整します。
9.架空の印刷会社を例に考えてみましょう

※以下は、事業計画の考え方を説明するための架空例です。特定の補助金における補助対象性や採択可能性を示すものではありません。
市場の説明だけで終わっている例
少量多品種の商品が増えており、小ロット印刷市場は今後も拡大すると見込まれます。そのため、デジタル印刷設備を導入すれば、売上の増加が期待できます。
この説明では、次の点が分かりません。
- 具体的に誰が顧客なのか
- 顧客が何に困っているのか
- 現在はどのような方法を利用しているのか
- 競合と比べた違いは何か
- どの程度の受注が見込めるのか
- なぜデジタル印刷設備が必要なのか
対象となる顧客
京都府内で季節商品や試験販売用の商品を開発する小規模食品メーカーおよび小売店のうち、100~500枚程度のパッケージを短期間で必要とする事業者
確認された顧客ニーズ
架空の事業者が、既存顧客10社への聞き取りと過去1年間の見積依頼を確認した結果、次のような要望があったとします。
- 新商品の試験販売用に少量だけ印刷したい
- 季節商品なので短期間で納品してほしい
- 完成した印刷データを自社で用意できない
- デザインと印刷を別々の事業者へ依頼する手間を減らしたい
- テスト販売の結果に応じてデザインを変更したい
顧客が現在利用している方法
- 大部数向けの印刷会社へ発注する
- デザイン会社とネット印刷を別々に利用する
- 既製の容器へ自社でラベルを貼る
- 発注数量がまとまるまで商品化を延期する
- 小ロット商品そのものを断念する
比較する競合・代替手段
| 選択肢 | 価格 | 小ロット | 企画相談 | 短納期 | 調整の手間 |
|---|---|---|---|---|---|
| 大部数向け印刷会社 | 大部数では抑えやすい | 対応しにくい場合がある | 対応内容による | 対応内容による | 比較的少ない |
| デザイン会社+ネット印刷 | 組合せによる | 対応しやすい | 相談できる | 組合せによる | 複数社との調整が必要 |
| 自社でラベル作成 | 少量なら抑えやすい | 対応しやすい | 自社で行う | 対応しやすい | 作業負担が生じる |
| 架空の印刷会社 | 想定単価による | 100~500枚に対応 | 企画段階から対応 | 内製化後に短縮 | 一つの窓口で対応 |
※この表は考え方を示すための架空例です。実際の申請では、比較対象となる事業者の公開情報、見積書、サービス内容などを確認して作成します。
自社が選ばれる理由
この印刷会社の強みは、単に新しい印刷設備を持つことではありません。
- 地域の食品メーカーとの取引関係
- 食品パッケージに関する提案経験
- 顧客の商品や販売先に関する理解
- デザイン担当と印刷担当の連携
- 企画段階から相談できる体制
といった既存の経営資源に、小ロット印刷の能力を組み合わせることです。
事業計画では、次のように説明できます。
既存顧客への聞き取りと過去の見積依頼から、試験販売や季節商品に使用する100~500枚程度のパッケージを、短納期で発注したいという需要が確認されている。
現在、顧客はデザイン会社と印刷会社を別々に利用する、自社でラベルを作成する、商品化を延期するといった方法で対応している。
当社は、地域の食品メーカーとの継続的な取引を通じて、商品特性や販売先を踏まえたパッケージ提案を行ってきた。また、デザイン担当と印刷担当が社内で連携し、企画段階から一つの窓口で相談に対応できる。
一方、現在の設備では小ロット印刷の原価が高く、外注では短納期への対応が難しい。そこで、デジタル印刷設備を導入し、企画・デザイン・小ロット印刷を社内で一貫して行える体制を整える。
このように書けば、
市場が伸びているから設備を導入する
のではなく、
具体的な顧客ニーズと代替手段を確認し、自社が選ばれる理由を踏まえて課題を解決する
という流れになります。
10.顧客・競合分析を売上計画へつなげる

顧客ニーズを確認しても、売上計画へつながっていなければ、事業の規模や実現可能性は分かりません。
売上計画は、計画の状況に応じて、次のように積み上げます。
見込受注先がすでに絞られている場合
顧客への聞き取りや商談によって、受注の可能性がある顧客がある程度絞られている場合は、
見込受注先数
×1社当たりの年間発注回数
×1回当たりの平均受注額
で計算します。
営業対象から受注先を見積もる場合
これから営業活動によって顧客を獲得する場合は、
営業対象顧客数
×想定成約率
×1社当たりの年間発注回数
×1回当たりの平均受注額
で計算します。
架空の印刷会社の売上計画
既存顧客からの受注
既存顧客10社への聞き取りの結果、そのうち8社から具体的な利用意向が確認されているとします。
見込受注先8社
×年間3回
×平均受注額8万円
=年間売上高192万円
この場合、8社はすでに利用意向が確認された見込受注先であるため、別途成約率を掛けていません。
新規顧客からの受注
新規顧客について、営業対象となる食品メーカー20社へ提案し、そのうち25%に当たる5社の受注を目指すとします。
営業対象顧客20社
×想定成約率25%
×年間2回
×平均受注額8万円
=年間売上高80万円
合計
既存顧客からの売上192万円
+新規顧客からの売上80万円
=年間売上高272万円
※上記は説明用の架空の数値です。
実際の申請では、
- なぜ既存顧客8社を見込めるのか
- 年間3回という発注頻度は妥当か
- 平均受注額8万円の根拠は何か
- 新規顧客20社をどのように選んだのか
- 成約率25%をどのような実績から見込んだのか
- 想定した件数を生産・納品できる体制があるか
を説明します。
市場規模から直接売上高を決めるのではなく、対象顧客と受注条件を積み上げて売上を計算することが、実現可能性を具体的に示すうえで重要です。
11.顧客・競合分析で起こりやすい問題

「市場が成長しているから売れる」と結論づける
市場の成長は事業機会の一つですが、自社が対象とする顧客、競合、販売方法まで検討する必要があります。
顧客の範囲が広すぎる
「全国の中小企業」「すべての高齢者」といった対象では、商品内容や営業方法を具体化しにくくなります。
一人の顧客の声を市場全体の需要と捉える
一人の顧客から要望があったことは参考になりますが、それだけで市場全体の需要を示すことはできません。ほかの顧客への聞き取りや販売実績なども確認します。
競合を同業他社だけに限定する
顧客が利用している代替手段や、購入しないという選択も確認します。
競合を根拠なく低く評価する
「競合は対応が悪い」「当社の方が品質が高い」と断定するのではなく、価格、納期、最小ロット、対応範囲などを比較します。
自社に都合のよい比較項目だけを選ぶ
顧客が重視していない項目で優れていても、選ばれる理由にはなりにくいでしょう。
顧客ニーズと補助対象経費がつながっていない
顧客の課題を明らかにしたうえで、その課題を解決するために設備やシステムが必要なのかを説明します。
12.顧客・競合分析のチェックポイント

事業計画を作成した後は、次の点を確認してみましょう。
- 対象となる顧客を具体的に説明できるか
- 顧客が抱える課題や不便を把握しているか
- 顧客ニーズを聞き取りや実績で裏付けられるか
- 市場全体と自社が対象とする市場を区別しているか
- 顧客が現在利用している方法を確認しているか
- 直接競合だけでなく代替手段も確認しているか
- 顧客が購入先を選ぶ基準を把握しているか
- 競合との違いを客観的な項目で比較しているか
- 自社の強みが顧客の選択基準とつながっているか
- 補助事業によって競争上の位置付けがどう変わるか
- 顧客数、単価、購入頻度から売上を算出しているか
- 想定した受注量へ対応できる体制があるか
すべての競合より優れている必要はありません。
重要なのは、
自社が対象とする顧客にとって、どのような点が選ぶ理由になるのか
を、事実に基づいて説明することです。
SWOTで整理した機会・脅威を経営理論の視点から深める

SWOT分析では、市場の成長、顧客ニーズ、競合の増加などを「機会」や「脅威」として整理できます。
しかし、
市場が拡大している
競合が増えている
と書くだけでは、それが自社の事業へどのような影響を与えるのかまでは分かりません。
業界構造や競争条件に着目する考え方やファイブ・フォースを参考にすると、
- 顧客はどの程度の交渉力を持っているか
- 新規参入は起きやすいか
- 代替商品へ切り替えられやすいか
- 仕入先への依存度は高くないか
- どの競争要因が収益を圧迫するか
といった問いを重ねることができます。
また、市場志向の視点からは、顧客ニーズに関する情報を収集するだけでなく、社内で共有し、商品や業務体制へ反映できているかを確認できます。(Duke People)
経営理論やフレームワークは、申請書に専門用語を書くためのものではありません。
SWOTで整理した機会や脅威を掘り下げ、
なぜその市場を対象とするのか
なぜ顧客が自社を選ぶのか
どのような条件で収益を確保できるのか
を考えるための思考の軸として活用できます。
まとめ

市場が成長していることは、事業機会の一つです。
しかし、市場全体が成長しているだけでは、自社の商品やサービスが売れる根拠にはなりません。
補助金の事業計画では、
対象となる顧客
→顧客が抱える課題
→現在利用している競合・代替手段
→顧客が購入先を選ぶ基準
→自社が選ばれる理由
→想定する顧客数・単価・購入頻度
→売上や付加価値などの成果
というつながりを具体的に説明することが大切です。
競合分析も、自社の優秀さをアピールするために行うものではありません。
顧客が利用できる選択肢を確認し、その中で、自社がどのような顧客へ、どのような価値を提供できるのかを明らかにするために行います。
市場規模の大きさだけで事業を説明するのではなく、実際に接触できる顧客と、顧客から選ばれる理由を起点として事業計画を組み立てましょう。
CEDAR行政書士事務所の補助金申請・事業計画支援
CEDAR行政書士事務所では、事業者様ご自身による事業計画の検討・作成を基本として、各制度の公募要領や申請ルールに従い、市場・顧客・競合の整理、顧客ニーズの裏付け、売上計画の確認、事業者様が作成した原稿への改善提案などを行っています。
「市場の統計は見つけたものの、自社の売上へどのようにつなげればよいか分からない」「競合との違いを客観的に説明できない」とお悩みの事業者様は、まずはご相談ください。
※補助金の採択を保証するサービスではありません。外部専門家による支援の取扱いや申告方法は制度ごとに異なるため、対象となる公募回の最新資料に従って対応します。
参考資料・参考文献
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金第1回公募要領・1.1版(令和8年7月)。市場規模・成長性、顧客ニーズ、競合との優位性、顧客ターゲット、選ばれる理由などが、事業計画作成および審査の観点として示されています。
- 小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉第20回公募要領・第8版(2026年7月21日更新)。対象市場・顧客ニーズ、新たな価値、客観的事実に基づく売上高・売上総利益の見込みなどが計画審査の観点として示されています。
- Porter, M. E., “How Competitive Forces Shape Strategy,” Harvard Business Review, March–April 1979. ファイブ・フォースの基本的な考え方が提示されています。(ハーバード・ビジネス・レビュー)
- Porter, M. E., “The Five Competitive Forces That Shape Strategy,” Harvard Business Review, January 2008. 1979年に提示されたファイブ・フォースの考え方を改めて整理した論文です。(ハーバード・ビジネス・レビュー)
- Kohli, A. K. and Jaworski, B. J., “Market Orientation: The Construct, Research Propositions, and Managerial Implications,” Journal of Marketing, Vol.54, No.2, 1990, pp.1–18. 市場情報の収集、組織内での共有、その情報への対応という市場志向の考え方が示されています。(Duke People)
